新府内録 社長の窓

第39回コラム「米国ゼロックスによる、HPの買収から学ぶ事」

フェーズワンが世界中拡散する、新型コロナウイルス(個人的には武漢ウイルスでも良いのですが)2020年4月2日、米国で世紀の買収劇と言うべきゼロックスによる、HPの買収提案を断念と言うビッグニュースがありました。

どこの国にも、保守派的アクティビティ(株主)はいるもので、今回の背景にはゼロックス筆頭株主カール・アイカーン氏の、思惑が強く働いた見方で大勢を占めております。

今回コラムでは、この上手く行かなかった買収劇から何を学ぶべきか、一個人の立場より多角的に考察して見ます。
 

ゼロックスと言えば、現代複写機のルーツと言うべき「ゼログラフィー」技術で米国特許を取得以来、70余年に亘り当該のパイオニアとして、現在に至っています。

その特許期間が切れて久しい、現在の米国マーケットシェアは1位HP・2位Canon・3位brother(!)に次いで、第4位の位置に付けている次第。

ともあれ想うところの株主であれば、保有している企業が何かしらのアドバンテージを示して欲しいと言うのは、当然の帰結でしょう。

その意思を組んだか否か、当時のゼロックス経営陣は日本で「富士ゼロックス」を通じ57年間の長きに、合弁体制を敷き続けた富士フイルムに、米国ゼロックスごと完全子会社化を2018年から働きかけ、実際準備を進めておりました。

経済サイトの中には、キャッシュを使わない企業買収の方針を批判するメディアも散見しますが、当方としてはマーケットアウトラインを鑑みれば、この経営判断は「妥当」と考えます、但しやむを得ないとの条件付きで。

それは何故か。

先ず、富士フイルムは元来材料開発を企業フィロソフィーとして、最近では抗ウイルス薬の呼び声高い「アビガン錠」の開発&生産を子会社通じて展開したり、少し前には我々無機化学分野経験者にとって、工業的試薬分野のトップブランドである「和光純薬工業」を武田薬品工業から、事業譲渡したりで、非常に「材料(研究)開発型」ナノテクノロジー的事業展開を、行っております。

富士ゼロックスを通じた合弁事業は、57年前当時のフィルム事業プロセスと黎明期の複写機を、アナログ的「同じ要素技術」として捉えていた結果だろうと推測します。

片や前述の通り、世界の複写機マーケットシェアトップは米国内と同じくHPが占めています、極めて重要なのはここが「PC(&半導体デバイス)生産事業も手掛けいる点」。

当時のゼロックス経営陣の自社救済的、完全子会社化の求めに対し、富士フイルムホールディングスの意向としては、もはやデジタル(IT)化が加速する、半ばアウェイ色の強い現在のオフィスソリューション的分野へ、「わざわざ財政出動せず」株式交換のみで完全子会社化を進めようとした、経営判断は至極真っ当の"筈でした"。

ここにオオカミの如く噛み付いたのが、キャッシュを出せっ!と強硬にアナウンスした、ゼロックスの筆頭株主「カール・アイカーン氏」その人です。

このプロセスで得た資金等を通じ、そのHPを買収しようとしたものですから、正にアメリカンドリームの再来来るかと色めき立ったのは、自分だけで無かったでしょう。

KYとは申し上げませんが。

ちなみにアイカーン氏は、米国トランプ大統領の最有力支持者。
こういう側面からも「米国イズファースト!」の、マインドが息づいています。

現代のビジネスを牽引するIT分野、取り分けGAFAに至るマーケットトレンドセッターが、即ちゼロックスと言うフィロソフィールーツであり、イタリアのアルファロメオ(フェラーリでは無い!)、日本のトヨタにも通じる祖国としてのメーカーアイコンなのです、何故に乗り物なのかはさておき。

その気持ちは分からないでも無いですが、こういうエモーショナルな取り組みは往々にして、頓挫するものです。

これが正に(上場)企業経営の醍醐味。
事業執行のスペシャリストでは無い、上場企業(外様)株主が世界的に「お金は出すけど口は出さない」と言われる所以です。

そうなって来れば、「あとは、どうぞ御自由に。」とならざるを得ません、当然の帰結です。
 

第三者から見ても極めて興味深い、「ケミカル系ナノテクノロジー創造企業」の富士フイルムが2021年4月より、「富士フイルムビジネスイノベーション」へ社名変更し完全子会社化する、富士ゼロックス。

長らくパートナーシップを組んで来た、合弁先と決別してしまうのは大変残念ですが、その分経営自由度が増すと思えば良かったですし、独自色を維持しながらIT世界市場のパワーバランス的展開へ、巻き込まれなくて何よりだったと思います。
 

日本国内に於いての企業イメージが、競合他社に比べエンジニアリング色が極めて薄く、そして複写機要素技術のルーツ「ゼログラフィー」をバックボーンに持つ、これからの富士フイルムビジネスイノベーションが、どの様に"有機的"なオフィスソリューションをもたらして行くのか。

ある意味今年から来年に掛けて最大級の関心事であり、「それは正に自身が目指す究極のビジネスモデル」。

自社も肖って「アガワ・ハイテックビジネスイノベーション」に変更しようと思いましたが、更に字数多くなるので、止めときます。

◯本コラムは個人の見解によるものです。

 アガワ・ハイテックソリューションズ株式会社
代表取締役社長 阿川 丈生