新府内録 社長の窓

第25回 今年一番の吉報を思う

今年も冬将軍がやって来たかの様な、11月中旬の昼下がりです、皆さまは如何お過ごしでしょうか。
少し前になりますが、以前から大変お世話さまになっている、地元上場企業のウェブサイト内、インフォメーションを拝見させて頂くと、 8月発布の公文書に、一瞬目を疑うお知らせがありました。
曰く「持ち株会社への移行に伴う、親企業との兄弟会社化についてのお知らせ」。
それにしても、僭越ながら当該企業在籍の社員さまから、色々と内情をお聴きして、正直懸念しただけに、直後「我が意を得たり」との心境でした。
今回コラムはその思い出話に、しばしお付き合い頂ければ幸いです。

数年前に亡くなられた、当該企業の創業社長さまとは、前職の先代社長からお付き合いしており、当時の社員さまも含めて、沢山のコミュニケーションをさせて頂きました。
その時から、地元にある同じ事業領域の企業群と一味違う、理念が明快に通うマインドがあります。
「これは別格である」と。

◇当時としては珍しい、特許を取得しており事業基軸が明快であった。
◇オンリー技術を極めん創業社長の顔が、良く見通せる企業風土で、進取の気概が伺えた。
◇事後談ですが、上記から結果的に県下製造業初の自社ビル建設や、株式上場を果たして地場企業経営のパイオニアであった。
更に業務的観点から述べると、 ◇当該企業が黎明期の頃、図面指定された表面処理品質限度が、規定に達しなかった時、通常であれば設計通りの仕様を堅持しなければ、ならないところを、 申し出により得意品質への要求を、快く了承してくれた事。
この事から、当時より(自分が就く前のエピソードです)大変器量の大きな企業さまのイメージが、植え付けられました。
ゆえに、「こちらへは、極めて丁寧に対応して行こう」と、思った瞬間です。
それは、創業社長さまと史上最大の大口商談成立経緯からも、窺えます。

25年以上経った現在も、忘れる事はありません。
何故か。それは拍子抜けする程の二つ返事だったから(笑)。

ここに至るまでは、関係各位の社員さまにご尽力を頂いたのですが、すんでの処で商談が不成立になる恐れがある為、技術レジュメ作成を始め、入念な準備を行いました。
しかし、それは全くの杞憂に終わります。
全体時間の中で、その時間は僅か4分弱程。
その多くの時間は、創業社長さまが見聞した諸外国のモノづくりプロセス比較に、多くを費やしました。
要するに、自分のモノづくりに対する考えを、分かって欲しかったのかなと。
丁度あらゆるタイミングが、良かったのかもしれません、内部技術的には少々傍流ではありましたが、これからのトレンドになる旨、 見解を示した上でアプローチは、琴線に響く事が出来て、良かったと思います。
繰り返し、現在でも一生の糧になっている成功事例の一部です。

よろしければもう一つ。 順風満帆の数年経ったある日、とある地元経済団体の月例卓話に、自らの提案でその創業社長を招聘する事となり、 当時の会長と二名でご訪問させて頂いた時も、本題に費やした時間は僅か2分程。
残りは、自分のモノづくりに対する考え方談義に終始しました。
この事からも、高学歴優等生的な社長像とは一味違う、とにかくアツいお人柄が垣間見え、恥ずかしながら虜になった記憶があります、無論現在もでしょうか。
だから、自身もそうでしたが21世紀に入り、徐々に成功事例が通用しなくなり、業績低迷著しくなった頃の創業社長さまを拝見するのは、とても辛い。
結果的に、後継者をあえて育てなかったのは、それだけ自負が勝っていた証拠と言えるでしょう。
そこが、奇しくも亡父と共通しています(過去のコラムをご参照)。

自分が不本意な辞任後(事後対応、重ねて感謝申し上げます)、程無くして社員さまから非公式に訃報が届きます。
その間際まで、業務に勤しんでいたのも偶然の一致でした。

あれから数年、株式会社(特に公開)の宿命と言うべき、多数派融和はあったにせよ、非友好的な株式取得による子会社化の知らせが、届きます。
今思えば、救済的要素があったにせよ、正直困惑の念を隠せません、この事は一部社員さまからのお話で、図らずも判明する事に。
資本主義下での、株式支配はどんな理由が有るにせよ、友好非友好に由らず持ち株比率の高い者が、経済主導権を握ります、その際、倫理的な根拠云々は一旦外に置かれますが。
自分が一番嬉しかったのは、これまでの経緯を鑑みた上で、買収した側の経営サイドが当該企業の歩んだ社歴や、培った企業マインドに半ば共感、 持ち株会社を設立の上で、兄弟会社化に踏み切ったご決断。
正式決定は来年の当該企業株主総会での、議案承認を待たなければなりませんが、当方は必ずやそうなると信じています、以後は株式取得も視野に入れながら。
つくづくビジネスとは、思慮に富んだ面白いものであると思った次第、根幹にあるのは与えられた市場で、事業推進をするにあたり、業績もテクニックも大切ですが、 要は大株主(社長)の考え方一つが、企業理念の鍵を握ると、言う事。
当該事業分野を極めんとして、易きに流れそうな新規事業立ち上げ云々を言う前に、眼下の領域を次世代へ繋げる努力は、決して怠るべきで無い。
当該企業の創業社長さまから、その事を現在も当方へ強く教えてくれます。

── 今回コラムのまとめ ──

  • 当該企業創業社長のたゆまぬ職責魂に、現在も虜になっています。
  • やはり進取の気概は大切であると。
  • これで企業体制が一気に、完成出来る運びとなり敬意を表します、天上でさぞやお慶びでしょう。
 アガワ・ハイテックソリューションズ株式会社
代表取締役社長 阿川 丈生