新府内録 社長の窓

第18回 必然的リスクヘッジの大切さ。東芝の経営危機に学ぶ

一昨年期末のいわゆる粉飾決算問題より表面化した、国内家電&重電メーカー最右翼である東芝自身の経営危機は、長年自分達らしくモノづくりに携わったものに対して、 大変な衝撃と多大な困惑を強く覚えました。
執筆時も、未だ前期決算発表が出来ない異常事態ですけど、マスコミやインターネットを通じた当該情報が粗方出揃ったと言う事で、 一先ず当方自身が想う率直な感想を書き列ねます。

当方がまだ前職駆け出しの頃、地元大分県内はそれこそ当時の東芝大分工場を頂点とした、子会社、孫会社、そして協力工場(企業)群からなる一大サプライチェーンが、存在しておりました。
幸いな事に、その中より直系から外様の協力企業に至るまで、数社お取り引きをさせて頂きました(現在継続中の企業さんも、あります)。
中小零細企業(前職)の在籍が長期に及ぶと、とかく原価計算を始めとする販売コスト算出、及び販売単価策定作業が、 同じく東芝グループからみた外注コスト低下要請圧力により(もう時効かな)、時に困難を極めます。
その内一社に至っては、発注決まるまでの見積単価承認が、週単位によりやたら時間掛かる次第、数十円単位でも同じありさまにて、正直苦労しました。

それに輪を掛けるような、生真面目な担当者さんの隙間無く、それでいて抜け目も無いパーフェクトな会話に、そろばんずくしの対抗技を携え、 当時の前職社長による条件不一致を起因とした、不本意な終了を迎えるまで、約6年間程お取り引きを致しました、 時には期末毎の会社決算書を(関係無い貸方なのに、どうして必要なのだろう)毎年提出したり、今ではお笑い種ですが実際の販売単価以上に、 労力と知力を放出させて頂いた記憶を、鮮明に抱いております。

ただこれまでを知る上、当方感想を述べさせて頂くのであれば、皆さんの見解と相違するかもしれない上で、「至極不運だった、あの原発大事故さえ無ければ」。
ある意味、禁じ手のコメントかもしれません。
再三弊コラムで述べさせているかもですが、自身が経営トップである以上、株主やステークホルダーに向けて、「何らかの時系列的、業績の大きな成果」を挙げたいと言うのは、 論理的な裏付けを越える「生気」だと思います、何を隠そう当方自身が前職のトップ在任時、絶対にそうだったから。
ただ「(その)功を焦る」と、逆効果になりかねない状況に陥る危険性を孕む訳です。
状況こそ違っても、今回引き起こしている東芝の経営危機は、長年培ったある意味「生真面目な企業風土が引き起こした、一種の悲劇」であろうと思います。

米国の原発メーカーを傘下に収め、先発国内企業二社(MH&HS社)に追い付き追い越せと言う、アグレッシブな経営スタンスは極めて秀逸でしたが、 その後の当該企業マネジメントを筆頭らしく、何にしてもツメが相当甘かった。
似た様な起因で、前職経営を退かなければならなかった、当方への強烈なアンチテーゼと奇しくもなりそうな、今回一連の東芝経営危機報道です。
例え、一世一代の大勝負を賭ける時が到来するにしても、不可抗力的に不運な外部要因が図らずも発生した時に備え、必然的リスクヘッジを確実に用意する。
そうしなければ、末端で地道かつ綿密に事業コストを算出し、その持てる労力を寸暇も惜しまず、提供続けた社員達に顔向け出来ません。
一瞬で下す、結果的に誤った経営判断一つが両刃の剣となる事を。
少なくとも当方の同級生らしく、その企業運命に翻弄される様な事だけは、ご遠慮願いたいと思います。

しかしこれだけの損失を被って、稼ぎ頭の半導体メモリー分野を、ほぼ全株売却しても尚、日頃より研究を重ねた水素を始めとする、 次世代エネルギー事業が陽の目を見るかの様に、東芝の今後を支える屋台骨になるとは。
上手く行けば、次の100年をこれで乗り切れそうなところは、「さすが名門企業、さすがTOSHIBA」と膝を打ちました、アイタタタ。
現在十字架を背負っている当方も、こんな黎明期から早く脱却しなければ。ネ。

── 今回コラムのまとめ ──

  • 今回の東芝経営危機は、他山の石とは成りにくい要因を孕んでいる。
  • そんな系列企業と地元大分県で前職時、お取り引き担当にさせて頂いたのは光栄だったし、現在に至る糧になっています。
  • 今回一連で引き起こった出来事が、振り返って究極なる「ケガの功名」になればと、願わずにいられません。
 アガワ・ハイテックソリューションズ株式会社
代表取締役社長 阿川 丈生